テラリウムの住人⑤ コケとの生活
著者:こびと
目次
こんにちは!こびとです。今回がコケ編最終回となります。
今まではコケが生えていそうな日陰に行っていたのですが、今回は日陰のない場所でコケを探してみることにします。今日の行き先は福井県のとある田んぼです!
田んぼに向かう途中足元を見ると、アスファルトにはスナゴケ、ギンゴケがちらほら。緑のじゅうたんはなかなか見れないですね。やはり水分が少ないアスファルトにはコケが生息しにくいのかも。
アスファルトのコケたちを見ているうちに田んぼに到着。あぜ道には、もうすぐ田んぼの水際まで伸びていきそうなハイゴケがありました。水中まで続くのかと水面をのぞいてみると、草がぽつんと浮いています!
調べてみると、これがコケだというのです!これはいったいどんな生態?
イチョウウキゴケってどんなコケ?

ゼニゴケ目ウキゴケ科のイチョウウキゴケ。日本全国、世界各地に生息しています。日本で唯一、水面に浮かんで暮らしているコケです。
田んぼに水が張ってあるときは水に浮き、水がなくなると地面に紫色の根っこのようなものを定着させます。
イチョウの葉に似ている葉の形から、「イチョウ」ウキゴケと名付けられました。
ところが、日本のイチョウウキゴケ、実は準絶滅危惧なんです!
準絶滅危惧とは、「現時点では絶滅の危険度は小さいが、生息状況の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性がある」種のことをいいます。
イチョウウキゴケが準絶滅危惧種となった原因は、人間が川や海に流した洗剤や農薬、肥料などによって水が汚れ自然界のバランスが崩れたこと。このコケは水の有無に関係なく生きられる生命力を持ちますが、その適応力をもってしても水質悪化には耐えられなかったのだと考えられます。
このコケの存在そのものが、日本と外国の環境へのかかわり方の違いを物語っている気がします。
イチョウウキゴケは水上で生息できることが分かりました。ほかのコケも海中以外ならあらゆる場所に生息しているようです。
特に日本は降水量が多く、南北に細長い地形から、世界的にもコケ類が豊富な国です。
コケに恵まれた日本にいる私たちは、その魅力を存分に感じていたいですね!
私が思う、コケの魅力3つ
ところで、私の思うコケの魅力は、見た目に加えてあと3つ。
1.名前も多様
1つ目は、名前も多様だということ。
提灯、葉巻、陣笠、クジャク、虎の尾、鳳凰…これらはすべて、コケの名前の一部。伝説の鳥や虎の付く名前は華やかですね!
コケに1つ1つ名前を与えた先人たちの創造力は、コケへの敬意を感じさせますよね!
2.強すぎる生命力
2つめは、強すぎる生命力を持っていること。
コケは切り刻まれても新芽を出せるほどの生命力を持っています!コケテラリウムや苔庭をつくるときにコケを増やす方法のひとつとして、「まき苔」があります。コケの緑の葉を小さく切って土にまく方法で、水を与えながら1,2か月待つと新芽が出て成長していくようです。
3.つくって、ささえる力持ち
3つ目は、環境をつくり生き物を支える力持ちだということ。
自然界でも私たちの身の回りでも、コケは周りに住む植物に快適な環境をつくる役割を持っています。
自然界では先駆者として草木よりも早く裸地に住み、地表の土を流れにくくし、水分を蓄え、草木が生きられる環境をつくります。
それに加えて私たちの身の回りでは、保水力の高さから盆栽や蘭の栽培で使われ植えられた植物の成長に役立っています。
コケの魅力とは見た目やさわり心地の良さだけではありません。
「水を取り込む」「胞子を飛ばしてふえていく」という一見シンプルな強さが、環境や生物に多大な影響を与えていることではないかと思っています。
コケの周りにも目を向ける習慣を
第1回から前回まで、ヤシの木、雪の結晶、ガラス細工、不揃いな花のような見た目をしたコケたちや、ふさふさなさわり心地のコケを紹介してきました。今回は水上、地上どちらも生きられる種類がいることについてもお話ししました。
まずは野外に出かけて、いつもよりゆっくりと歩いてみましょう。
コケを見つけたら、ほんの少し立ち止まってみてください。
見落としていた生き物、聞き逃していた音、マスクでさえぎっていたにおいに気づきます。
道路を横断中のかたつむり。線香花火を思わせる草。トンボの羽音。草刈りのあとに香る、畳に似た香ばしいにおい…


コケを探すために外を見渡すとコケの周りに暮らす植物や虫、鳥などにも会えるはずです。
このブログを読んでいただいた皆さんに、自然との「出会い」「気づき」を感じていただけたら嬉しいです。
今回でコケ編は最終回となります。またお会いしましょう!