希望ある未来:『チンプ・クレイジー』が霊長類の福祉に行動を促す理由
2024.9.10
目次
みなさんは、ジェーン・グドール博士を知っていますか?実はこの博士、すごいんです。チンパンジーの保護に生涯を費やしているといっても過言ではないんです。
ジェーン・グドール博士はチンパンジーや霊長類、さらにはすべての動物の福祉のために戦ってきました。彼女の活動は、1990年代初頭のチンパンジーの絶滅危惧種指定に向けた取り組みや、2013年にその保護を拡大したこと、2015年のチンパンジーに対する生物医学研究のほぼ全面的な禁止を含む、数多くの成果を達成しています。
今回はJane Goodall Institute USA(ジェーン・グドール研究所アメリカ支部)が、チンパンジーを含む霊長類の保護について、ドキュメンタリーシリーズ『チンプ・クレイジー』を通して問題提起していますのでご紹介します。
Jane Goodall Institute USA(ジェーン・グドール研究所アメリカ支部)は、ジェーン・グドール博士のビジョンを実現し、チンパンジーや他の野生生物の保護、環境保全、人々の生活向上を目指して活動する団体です。1977年に設立され、現在では世界的な保全運動の中心となっており、個々の行動が自然環境や生態系に与える影響を理解し、持続可能な未来を作り上げるための取り組みを支援しています。
チンプ・クレイジーが暴く真実:今こそ行動すべき理由
チンパンジーをはじめとした霊長類の赤ちゃんはすごく可愛いですよね。HBOの新しいドキュメンタリーシリーズ『チンプ・クレイジー』では、霊長類の赤ちゃんが、人間の環境・人間の生活に適応させられる状況を描いているドキュメンタリーです。果たして、人間の環境や生活に適応させられている状況は、チンパンジーなどの霊長類にとってどうなんでしょうか?
私たちの文化では、人間と霊長類が一緒に暮らすイメージがある程度普通のことのように見えるかもしれません。ですが実はそのことは全く普通でも自然でもないのです。霊長類は、たとえ捕獲された個体であっても、依然として野生動物です。犬や猫のように、霊長類が飼いならされ、安全で適切なペットになると誤解されがちですが、それは事実とはかけ離れています。
霊長類は家畜化されておらず、ペットとして飼うことは適していません。霊長類が自然の中で生きる権利や、科学に基づいた福祉が提供される適切な施設での生活を否定することは、科学を無視し、すべての生き物が持つべき思いやりやケアを無視することになります。野生動物である彼らは、可能な限り自由で自然な生活を送る固有の権利を持っているのです。
『チンプ・クレイジー』はチンパンジーの状況に焦点を当てていますが、この問題はすべての霊長類に影響を与えます。チンパンジー、オランウータン、さらにはマカクなどの小型の種に至るまで、すべての霊長類はその野生性と複雑なニーズを認識し、保護されるべき存在です。
捕獲された霊長類の暗い現実
『チンプ・クレイジー』に描かれた場面や物語は一部の人々を驚かせるかもしれませんが、私たち霊長類の保護に携わる者たちにとって、これらの状況は日常的に見られるものです。民家や道路沿いのアトラクション、さらには実験室まで、世界中で、霊長類は人間の利益のために搾取されてきました。
捕獲された状態で生まれた場合でも、野生から盗まれた場合でも、これらの個体はその食事や住環境、遊びの機会、さらには人間との接触まですべてにおいて、不自然な環境に置かれています。彼らは州や国境を越えて密輸され、家族や野生の生息地から引き裂かれることで想像を絶する苦しみを味わっています。チンパンジーがさまざまな産業で使用されてきたことは、違法な密輸の需要をもたらし、野生の個体数をさらに脅かしてきました。この搾取はチンパンジーだけに限らず、地球上のすべての霊長類に影響を与えています。
野生動物福祉におけるジェーン・グドール研究所の影響
すべての種を保護し、地球の保全に取り組むというジェーン・グドール博士のビジョンを証明するかのように、ジェーン・グドール研究所の世界的なネットワークは、コンゴ共和国にある「チンポウンガ(Tchimpounga)」保護区などを通じて、最先端の野生動物リハビリテーション活動を支援してきました。
チンポウンガ保護区を家とする156頭のチンパンジーや他の種は、主に違法な野生動物取引で孤児となり、救助されたものであり、献身的なケアを受けています。これには、チンパンジーの福祉を継続的に評価する「チンパンジー福祉指数(Chimpanzee Welfare Index)」が含まれており、これはチンポウンガの主任獣医であるレベッカ・アテンシア博士と専門家チームによって開発されました。この指数は、動物研究倫理学者のアマンダ・ファーニー博士によって作成された「大型類人猿福祉指数(Great Ape Welfare Index)」に基づいており、福祉の包括的で標準化された測定方法が導入されました。これにより、飼育下の大型類人猿のケアが改善され、世界的な基準が向上しました。
さらに、ジェーン・グドール研究所は2006年に南アフリカで唯一かつ最大のチンパンジー保護区「チンプ・エデン(Chimp Eden)」を設立しました。
行動を起こす:霊長類の保護に参加しよう
『チンプ・クレイジー』というドキュメンタリーは、霊長類が不適切に扱われている現状を明らかにし、それに対して行動を起こすきっかけを与えてくれる貴重な番組です。このシリーズを見れば、私たちが進めている霊長類の私有飼育を終わらせるための取り組みが、どれほど重要かがよくわかるでしょう。これまでにも大きな進展を遂げてきましたが、まだ私有のチンパンジーや観光名所、実験施設で飼育されている霊長類の救済には多くの課題が残っています。また、同じように厳しい状況に置かれている他の数千頭の霊長類も保護しなければなりません。
「チンパンジーが娯楽や『ペット』として扱われることに注目が集まることで、一部の飼育環境で彼らがどのように扱われているかを知る機会が得られます。チンパンジーや他の野生動物は、ペットとして飼ったり観光のために使ったりすべきではありません。チンパンジーがペットや観光客向けの娯楽として売られることが、この取引を促進しており、アフリカの一部地域ではこれが彼らにとって最大の脅威のひとつとなっています。今も、チンパンジーを正しく世話し、彼らの生活を改善するために働いている多くの人々に感謝しましょう。」
提供元:A FUTURE OF HOPE: HOW CHIMP CRAZY CAN INSPIRE ACTION FOR PRIMATE WELFARE
まとめ
野生動物を保護に精力的に活動しているジェーン・グドール博士。野生動物の保護に生涯を費やしている彼女を見ると、自分で出来ることは何だろうと考えるきっかけにもなりますよね。