サステナブルな社会のために、再生ポリエステルをうまく活用するコツ
2024.7.2
目次
環境問題への危機感・関心が高まるなか、再生ポリエステルが注目されています。この記事では、再生ポリエステルの環境に良いとされてる理由・メリット・デメリット、そして生活のなかに再生ポリエステルを組み入れてサステナブルな社会づくりに貢献する方法をお伝えします。
再生ポリエステルとは
再生ポリエステルとは、廃プラスチックからつくられる化学繊維のことです。従来のポリエステルとは異なり、石油を原料として使いません。そのため、石油枯渇問題の改善やプラスチックごみの削減に役立つとされ、現在注目を集めています。
従来のポリエステルは安価で耐久性にもすぐれており、衣服にも多く使用されてきました。国際環境NGO団体Greenpeaceによると、ファストファッションがブームとなった2000年以降、ポリエステルの使用量は急増しています。
地球の環境を守っていくために、日本は2019年にプラスチック資源循環戦略を策定しました。ファストファッション業界では、ユニクロが2023年までにリサイクル資源の使用量50%を目指すと公言。H&Mは同年までにサステナブルな素材もしくはリサイクル素材のみを使用す目標を掲げています。
私たち個人も、天然資源の枯渇や地球温暖化を防ぐために、再生ポリエステルについて学び、うまく活用していく必要があるでしょう。
再生ポリエステルが環境に良い理由
再生ポリエステルが環境に良いと言われている理由は、次の3つです。
- 石油の使用量を減らす
- プラスチックごみを削減する
- 二酸化炭素排出量を抑える
1.石油の使用量を減らす
ポリエステルは、石油や天然ガスからつくられています。石油は自動車などの燃料や化粧品、アスファルトの原料にもなっており、日常生活に欠かすことのできない天然資源です。しかし現在、その石油が枯渇する可能性が浮上しています。
2015年には、石油の使用限度が変わらないかぎり2066年までに枯渇する可能性があるとの研究結果が発表されました。現在、石油と代わりとなるオイルやエネルギーが発見・開発され、枯渇までの期限は少しずつ遠ざかっています。しかし、限りある資源であることには、変わりありません。石油を原料としない再生ポリエステルを使い、近い将来に石油が枯渇してしまう可能性を遠ざける必要があります。
参考:WHEN WILL FOSSIL FUELS RUN OUT?
2.プラスチックごみを削減する
1950年以降は83億トンものプラスチックが生産されてきました。63億トンが廃棄され、そのうち79%は埋め立て地か海洋へと捨てられています。イギリスのエレンマッカーサー財団は、2050年には海洋のプラスチックごみの量が魚を超える可能性があるという調査結果を発表しました。
プラスチックを廃棄せずに原料として使用する再生ポリエステルの生産促進は、プラスチックごみの削減に欠かせません。
3.二酸化酸素排出量削減に繋がる
地球温暖化を促進し、洪水や干ばつといった自然災害や農作物の生産に影響をあたえる二酸化炭素のうち、ポリエステルを含む化学繊維の生産時に排出されるのは約147万トン。
石油からポリエステルを生産する際と比較すると、再生ポリエステルの生産では二酸化炭素の排出量を35%抑えられると言われています。
つまり、ポリエステルから再生ポリエステルへと移行していくことは、二酸化炭素の排出量を減らし、地球温暖化を緩やかにするのです。
参考:ケミカル・リサイクル
再生ポリエステルの特徴
地球環境を守るために注目されている再生ポリエステルですが、実際の使い勝手はどうでしょうか。
1.耐久性がある
軽量で夏場でも着用しやすい再生ポリエステルは、耐久性が強いことで知られています。また、コットンやリネンなどの自然素材と比べるとお値段もおてごろ。基本的には長く使える、コスパの良い素材だと言えます。
2.シワになりにくく型崩れもしにくい
一般的なポリエステルと同じく、再生ポリエステルもシワになりにくいのが特徴。そのため、自然素材の洋服とは異なり、洗濯したてでもアイロンを使わず、そのまま着用できます。
3.速乾性に優れている
繊維の中に水分が沁み込まず、汗をかいてもすぐに蒸発します。その特徴から、夏場でもサラッとした肌ざわりが保たれます。
再生ポリエステルのデメリット
環境に良いとされている再生ポリエステルですが、デメリットもあります。
1.肌に負担がかかる
一般的なポリエステルも廃プラスチックからつくられる再生ポリエステルも、成分に石油が含まれていることに変わりはありません。石油からつくられた合成繊維は摩擦と静電気が起こりやすく、肌に負担がかかります。静電気がおきやすい人や、肌が弱い人、合成繊維が苦手な人は避けたほうが良いでしょう。
2.毛玉になりやすい
摩擦がおきやすい合成繊維は、自然素材に比べると毛玉もできやすいのが難点です。毛玉をおさえるためには、洗濯するときは洗濯ネットにいれたり、手洗いコースで優しく洗うのがおすすめ。もしくは、柔軟剤を使うと摩擦を防げます。
3.マイクロプラスチックを排出する
国際自然保護連合によると、海中のマイクロプラスチックのうち、約35%は洗濯から流出したもの。この割合は、タイヤや街中の粉塵を抑え1位を占めます。
マイクロプラスチックとは、直径5mm以下のプラスチックのこと。近年では、マイクロプラスチックの海洋流出が問題になっており、魚の消化機能に炎症が起きたり繁殖力や生存率が低下したりするリスクが懸念されています。人間への影響は、まだ明らかにされていませんが、危険性がゼロとは言い切れません。
ポリエステルを洗濯する際に、マイクロプラスチックが剥がれて洗濯排水とともに流出するのですが、再生ポリエステルでも同様の現象が起こっています。
参考:Primary Microplastics in the Oceans: a Global Evaluation of Sources
再生ポリエステルの環境負荷を減らす使い方
せっかく再生ポリエステルの商品を積極的に使用しても、すぐに傷んでしまったり捨ててしまっては、ゴミが増えてしまいます。また洗濯の仕方を工夫しないと、マイクロプラスチックの問題も避けられません。
ここでは、次の3つをお伝えします。
- 捨てない工夫
- 長持ちさせる工夫
- 洗濯のときの工夫
1.捨てない工夫をする
せっかくプラスチックごみ削減に貢献している再生ポリエステルを買っても、捨てればごみになることには変わりありません。そのため、リサイクルや再利用し、すぐに廃棄しないようにしましょう。
【1】回収ボックスに持っていく
近年では、H&Mやユニクロなど回収ボックスを設置しているブランドが増えています。回収された服は資源としてリサイクルされたり、発展途上国で配布されたり、次の新しい役割を与えられます。
【2】古着として販売する
あまり傷みがない場合は、古着屋さんに持っていくか、フリマアプリで売るかして、他の人に活用してもらうのも良いでしょう。
【3】掃除道具として活用する
ボロボロで洋服として利用できない場合は、ハンカチサイズに切ってフロスとして掃除に使うのにも便利です。
2.長持ちさせる工夫をする
ゴミになれば焼却時に環境負荷がかかってしまいます。まずは長く着用できるよう工夫することで、捨てる頻度を減らしましょう。
【1】洗濯表示マークを確認する
洋服にもっとも負担がかかってしまうのは、洗濯時です。洗濯の際の摩擦で毛玉ができてしまう・生地が弱ってしまう、もしくは乾燥器で服が縮んでしまう可能性があります。
まずは洋服の洗濯表示マークを確認し、洗濯時の水や乾燥器の温度、アイロンの使用方法を確認しましょう。
【2】品質の良いブランドを選ぶ
一概に再生ポリエステルと言っても、その品質はブランドによって異なります。たとえば「再生ポリエステルを使い、地球環境に貢献しています」や「原料のうち〇%は再生資源に代えています」と言っても、すぐに傷んで捨てなくてはいけない服を買うのであれば、購入頻度と廃棄頻度、そして生産時の環境負担が増えるだけ。言い換えると、企業は儲かりますが、消費者や地球環境への貢献度は高くありません。
再生ポリエステルは一般的なポリエステルより品質が劣るといわれていますが、技術の向上で新品同様の耐久性を叶えているブランドもあります。商品の生産過程や工夫点、実際の二酸化炭素排出量の削減率などの効果などを公表しているブランドを選ぶようにしましょう。
【3】洋服以外で活用する
洗濯が必要な洋服はどうしても傷んでしまいますが、頻繁に洗濯をしなくてもいいバッグやポーチを買う際に、再生ポリエステルを購入するのがおすすめ。
さらに再生ポリエステルは、前述のとおり型崩れしにくいという特徴があります。そのため、保冷バッグやポーチのように機能的に立体感が必要とされる商品に向いている素材と言えます。実際スターバックスなど大手チェーン店も、再生ポリエステルを使ったバッグを販売しています
3.マイクロプラスチックの排出を減らす工夫をする
せっかく環境について考えて再生ポリエステルの製品を購入しても、海の生態系への影響が心配されるのであれば、自然素材の洋服を促進するほうが環境には優しいでしょう。しかし再生ポリエステルも洗濯の仕方を工夫するだけで、マイクロプラスチックの排出を抑えることができます。
注目されているのは、合成繊維専用の洗濯ネットです。網目が細かいため、マイクロプラスチックの流出を防ぐことができます。2,000~4,000円と高額ですが、大量に購入する必要はない・買い替える頻度が少ないといったことを考えると、痛手ではありません。
さいごに
再生ポリエステルは、石油の使用量・プラスチックの廃棄量・二酸化炭素の排出量の減少に貢献するため、これからのサステナブルな社会づくりにとっては重要な素材です。しかし、もし購入されることも使われることもなく廃棄されてしまえば、従来のポリエステル産業に、新たに再生ポリエステルの廃棄という環境負荷がかかってしまうだけです。そのうえ、マイクロプラスチックの海洋流出という問題も発生させてしまいます。
生産する側は、サステナブルというイメージ効果にあやかって再生ポリエステル素材の製品を売り出すのではなく、飽くまで従来のポリエステルに代わっての使用を促進していく必要があります。
また、必要以上の化学繊維の生産と販売の先には、大量購入をする消費者がいるのを忘れてはいけません。購入する側は、不必要に購入するのではなく、必要な分だけを購入し大切に使い続ける、もしくは他の人にも使ってもらえるような使い方を意識する必要と、マイクロプラスチックを流出させないよう工夫する必要があるのです。
環境負荷の低い商品を選ぶことは第一ですが、その商品の特性をよく学び、環境負荷の低いライフスタイルを選んでいくことが大切です。