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龍の石像

日本の龍と中国の龍の違いとは?神話と共にご紹介

2023.12.25

目次

2024年は辰年。

龍は空想上の生き物ですが、様々な物語や絵に登場する身近な存在ですね。

そんな龍について調べてみると、ある意外な事実がありました。日本の龍と中国の龍には違いがあるというのです。

今回はその違いについてご紹介します。

龍って何者なの?

龍は世界各地で伝承されている架空の生き物(神獣・霊獣)です。西洋では「ドラゴン」と呼ばれていることは有名ですね。

性格は世界各地で異なっていますが、蛇のように長い胴体を持ち、爬虫類のような姿で、不思議な力を持っていることはどこでも共通しているといわれています。

台風、川の氾濫、雷など、古代人類は予測のつかない自然現象を恐れていました。古代の人々は、そんな人知を超えた自然のパワーの象徴として龍を恐れたのです。

龍(=自然)の捉え方は地域によって変わり、日本や中国などの東洋では崇めるべき尊敬の対象として、西洋では退治すべき悪い生き物としてイメージされてきました。

万里の長城
画像引用元:Pixabay

中国神話における龍とは?

中国において龍が登場したのは、紀元前1600年ごろの殷の時代。普段は水中や地上に棲んでおり、その啼き声は嵐を呼ぶといわれています。

歴史を通じて中国皇帝を象徴するシンボルとしても知られていて、前漢の初代皇帝劉邦は母親が龍と交わって産んだ子供だという伝承は有名です。

そんな龍ですが、ルーツがはっきりしていません。しかし、伝説上の中国の始祖黄帝が龍に乗って天に昇ったという有名なエピソードがあります。中国神話の龍は天(不死の世界)と地を行き来する生き物として知られていました。

中国の龍が私たちの知っている姿になったのは、漢の時代であるといわれています。王符という学者が「頭はラクダに、角は鹿に、目は鬼に、耳は牛に、うなじは蛇に、腹は蜃(ハマグリのような架空の生き物)に、うろこは魚に、掌は虎に、爪は鷲に」それぞれ似ているという説を唱えたことがきっかけでした。こうしてイメージが固まった龍は、時代を追うごとに神格化されていきました。

日本神話における龍とは?

日本に龍が伝来してきたのは、弥生時代以降といわれています。大阪和泉市にある池上曽根遺跡では、龍を連想させる模様の壺が発見されました。

日本神話で明確に龍が登場したのは、神武天皇の祖父彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)の時代でした。彦火火出見尊は、兄の大切な釣り針を失くしてしまい、「海神の宮」という場所へ訪れます。そこで後の妃となる豊玉姫と出逢いました。

彦火火出見尊の子供を身ごもった豊玉姫は夫にお産の様子を覗かないようお願いします。我慢できず覗いてしまった彦火火出見尊が目にしたのは、龍の姿となった豊玉姫の姿でした。約束を破られた姫は怒り、産んだ子供を捨てて海へ帰ってしまいます。

一説では、日本海を中心に活動していた海神族(わたつみぞく)という氏族が存在し、その氏族の娘である豊玉姫は海神、つまり龍の娘として敬われていたのではないかと言われています。

龍の石像
画像引用元:Pixabay

日本の龍と中国の龍の違いとは?

そんな日本の龍と中国の龍の姿には、ある違いがあります。それは爪の数。

中国の龍の爪は5本、一方で日本の龍の爪は4本です。これはいったいどうしてなのでしょうか。

日本の東洋史学者である宮崎市定によれば、架空の生き物である龍の爪の数はもともと明確には決まっていなかったようです。それが宋の時代(日本では平安時代末期から鎌倉時代)に、2本の角と5本の爪を持つ龍は中国皇帝にしか所有が許されないと決まりました。

この取り決めは宋の滅亡後も元・清の皇帝たちに引き継がれ、中国の歴史的な建造物などでは、皇帝の龍である5爪の龍が多く残ることになったのです。

こうして、中国の民間では4本以下の爪の龍を描いたものが流通しました。また中国の隣である朝鮮では、皇帝に遠慮して4爪の龍を王家のものとしたのです。

中国と朝鮮の民間人と交易を行っていた日本は、4本以下の爪の龍を本来の姿として受け入れてしまったのです。

これが、中国と日本の龍の爪の数が異なる理由でした。

まとめ

今回は日本の龍と中国の龍の違いについてご紹介しました。

お皿の模様からアクセサリーまで、広く長く愛される龍ですが、調べてみればとてもありがたい神獣様であることがわかりますね。

中国と朝鮮との交易の歴史的経緯から、爪の数に違いが出来てしまったことも面白いです。

東京の田無神社や神奈川の箱根神社、京都の車折神社など日本各地には龍にちなんだ神社が数多くあります。2024年が良い年となるよう、一度訪れるのも良いかもしれません。

参考文献

宮崎市定『宮崎市定全集 17』岩波書店(1993年)

笹間良彦『図説・龍の歴史大事典』株式会社遊子館(2006年)

池上正治『龍と人の文化史百科』原書房(2012年)

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