お寺の職員が教える!お参りの作法とやってはいけないこと
2024.2.20
目次
お寺で働いていると、毎日のように「お参りってどうやればいいんですか?」とご質問をいただきます。1つひとつに興味を持ち、学ぼうとしてくださるのは、お寺を守る身として、とても嬉しいこと。ですが、作法以外の行動で迷惑をかけていたり、恥ずかしい思いをしたり、環境に傷をつけていることもしばしばあります。
せっかくお寺にお参りするのなら、整った姿勢とすっきりした心で帰りたい。そのために役立つお参りの基本的な作法と、避けるべき行動を紹介します。
お参りの基本的な作法
①山門の前で、お辞儀をする
山門とは、お寺の正面にある門のこと。参拝者にとってはお寺への入り口ともなっている山門は、世俗の世界と仏道の世界の境界を表しています。
ここでは、まずそっと手を合わせてお辞儀をしましょう。観光客で混雑しているお寺では難しいかもしれませんが、今からお寺に入らせていただくご挨拶や、気持ちを沈める準備にもなります。また、敷居は踏まずにまたぐこと。高さがあるので、特に足が悪い人はゆっくり進み、つまずかないように気を付けてくださいね。
②手水をとり、心身を清める
お参りの前に、穢れをおとすために手や口を清めます。人の家に土足であがらないのと同じように、外から持ち込んだ汚れを落としてから本堂に入りましょう。
- 右手でひしゃくを持ち、左手を清める
- 左手でひしゃくを持ち、右手を清める
- 右手でひしゃくを持ち、左手に水をくみ口をすすぐ
- 両手でひしゃくを縦に持ち、持ちてを清める
③本堂にお参りをする
お賽銭をそっとお賽銭箱にいれ、合掌をして一礼をするのが基本的な流れです。
お賽銭を入れるとき、投げ入れるのは控えましょう。本堂内に音が響き、お賽銭箱も傷ついてしまいます。神社では二礼二拍一礼が基本で、「パン…パン…」と、手を叩いてからお祈りをしますが、お寺では音はたてず、そっと手を合わせて合掌の形にし、静かにお参りをしましょう。
本堂に入る前に焼香台が置かれている場合は、焼香をしてからお参りをします。抹香という粉末状のお香を額に近づけて、静かに炭のうえにくべていきます。回数は宗派によって異なるので、お参りをしているお寺の宗派に合わせるか、ご自身の宗派に合わせるかが基本です。もし分からなければ、1回行うだけでも大丈夫です。
④山門で一礼をして帰る
出ていく際も、山門を出たところで一礼をしましょう。お邪魔させていただいたお礼でもあり、お寺へのご挨拶としてでもあります。
作法で最も大切なこと
作法を学んでも、いざとなると忘れてしまったり、慣れるまではきちんとできているか不安になることもあるでしょう。もちろん正しく行うに越したことはありませんが、作法とはマナーであり、マナーとは一緒にいる人とお互い心地よく過ごせるよう心遣いをすることです。実際、作法を4段階に分けると、人の家にお邪魔するときのマナーととても似ていますね。
- 山門で一礼をする→「おじゃまします」を言う
- 手水で手や口を清める→土足で家にあがらない
- 本堂ではそっと静かにお参りする→人の家で好き放題しない
- 帰る前にも挨拶をする→「おじゃましました」を言う
ひとつひとつの作法を型どおりに正しくやるよりも、作法の意味を自分なりに考えながら行うことで、本当に美しい所作となります。せっかくお寺にお参りするのなら、マインドセットとして、作法を見直すのもいいかもしれません。
知らず知らずやってる!避けたい行動7選
作法を守っていても、実は無意識のうちに自分の行動が境内を傷付けてしまっていたり、他の人に迷惑をかけてしまっていることがあります。どれも悪気はなく、周りへの影響に気付かないままやってしまっていることが多いので、もし当てはまっていたら次からは気を付けよう、という思いで、以下の項目に目を通してみてください。
①御朱印だけをもらって帰る
御朱印ブームで、お寺とあまり縁がなかった人もお寺巡りをするようになりました。人とお寺の距離が縮まるのは素敵なことですが、御朱印は、基本的にお参りをした印として授与されるものであり、スタンプラリーやコレクション集めではありません。
御朱印を書く人は、一筆一筆丁寧に書いていらっしゃるため、ただ集めて楽しむというのはあまり気持ちの良いものではありません。拝観料を支払わず、お参りをせずに御朱印だけをもらって帰るのは控えましょう。
②大きな声で会話をする
友人や知人とお話をしながらお参りをするのはもちろん問題ないですが、境内は音を遮るものがなく、建物内は音が響きやすいことがしばしば。広大な敷地をもつお寺でも、回廊やお庭の端から端まで会話が丸聞こえ、ということも実はあります。
静かにお参りをされたい方にとっては控えてほしい行動ですし、話している人自身も、自分の声が響いているのは少し恥ずかしい気持ちになりますよね。普段よりも少し控えめな声を意識しましょう。
③本堂でカメラを使う
観光客が多いお寺であっても、本堂はお参りをする神聖な場所です。建物の造りや襖絵や仏像に惹かれ、カメラを向けたくなる気持ちは分かりますが、まずは近くのスタッフに撮影の可否を確認してみてください。
写真を撮って良い場合であっても、ご本尊にカメラを向けるのは控えましょう。飽くまで信仰の対象であり、私たちの鑑賞のために置かれているわけではありません。また、ご本尊をカメラに閉じ込めてしまう、という捉え方もあり、縁起もあまりよろしくはありません。
④砂利道に侵入する
砂利道に入るのがご法度というわけではありませんが、歩いているうちに砂利を蹴ってしまい、その砂利が建物に傷をつけたり、周りに映えている草花や苔を痛めてしまうことがあります。
そのため、石畳や飛び石のうえを歩くことが大切です。砂利しか敷かれていない場所がもしあれば、大股や早歩きは避けて、砂利を蹴飛ばさないように気を付けましょう。
⑤スマホやカメラに夢中になる
撮影禁止の場所以外であれば、撮影は個人の自由です。しかし、写真をとることに一生懸命になりすぎて、園路からはみ出た足が苔地に侵入してしまっている人も多くいます。そうなると、苔は剥がれて枯れて、草花は痛んでしまいます。
同じ場所でずっと撮影をしていると、他の人が通れずに道が詰まってしまったり、他に撮影したい人ができなかったり、つい迷惑がかかってしまいます。撮影をするときは、カメラだけを見つめるのではなく、自然や他の人たちへの心配りも忘れないようにしましょう。
⑥スーツケースを持ち込む
スーツケースを石畳のうえで引きずると、音が境内に響くのはもちろん、石畳が傷ついてしまいます。駅や商業施設のロッカー、ホテルに預けてからお寺に行くようにしましょう。
なかには、入口で荷物を預かってくれるお寺もあります。もし時間の都合などで他に預けることができない場合は、事前に電話やメールでスーツケースを預けられるかどうか確認してみてください。
⑦露出の多い服を着る
お寺のなかには、たとえば高野山のように、仏教が本来もつ意味や雰囲気を大切にしている場も多いので、露出度の高い服を着ていくのは好ましくありません。
特に座禅体験のときは注意が必要です。一礼をしたり、胡坐で座ると、ミニスカートやショートパンツ、ノースリーブの隙間から、見られたくないものが見えてしまいますし、近くにいる人も目のやり場に困ってしまいます。
お寺のお参りはマナーが厳しい?
お寺は、「厳しい」「ルールが多い」と思われるかもしれません。実際、お寺は遊ぶ場所やはしゃぐ場所ではなく、信仰の場なので、敷居の高さを感じる人もいるでしょう。
しかし、お寺で守るべきものは案外基本的なことがほとんどです。
基本的であるからこそ、お参りをするときだけでなく、日常生活でもつい忘れてしまいますよね。自分の気持ちを優先してしまい、他の人のことを考えるのを忘れてしまっていないか、と聞かれると、少しドキッとする人も多いのではないでしょうか。
悪気なくやってしまうこと、失敗してしまうこと、知らずにやってしまうことは、誰だってあります。だからこそ、お寺という日常とは切り離された空間で、自分自身の一挙手一投手に気を払い、自分自身を見つめなおしてみる。そのきっかけとして、作法や行動を一度見直してみてもいいかもしれません。
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