日本だけ⁉犬猫販売禁止はもう世界の常識だった
2024.7.19
目次
ペットショップを覗くと、コロコロとした子犬や子猫がじゃれあっています。
もう可愛くて、ついつい引き寄せられてしまうという方も多いんじゃないでしょうか。
色々あるご時世の中、ペットの存在は本当に癒しですよね。
ペットを迎えて家族の会話が増えた、人生が明るくなったという方も少なくありません。
ショーウィンドウに並ぶ可愛い子犬や子猫は、いつの時代も人気があります。
もしかしたらあなたも、ペットを迎えることを検討しておられるのかもしれません。
ペットショップ、ブリーダー、保護施設、インターネット、今は色んな方法でペットを入手することができます。
調査によると、ペットを購入する人によって選ばれているのは、ダントツでペットショップです。
参考:Pet Acquisition by Age Group
ペットショップで可愛い犬猫と出会いたいと考えておられますか?
実は、現在ペットショップでペットを購入できるのは日本くらいで、多くの国では犬猫の販売がすでに禁止になっているということをご存じだったでしょうか?
この記事を最後までご覧になると、海外と日本のペットに関する認識が大きくかけ離れていることがよくわかるでしょう。
もちろん、ペットショップ=悪というわけでは決してありません。
しかしペットを迎える前に、どこでペットを購入すればいいのか、選択肢をたくさん知っておくのは賢明だと言えるでしょう。
この記事では、①犬猫販売をしている日本のペットショップの真実、②海外で犬猫の販売が禁止されている理由、③日本が犬猫の販売禁止に踏み込めない要因、④日本も近いうちに犬猫販売が禁止になるといえる理由をお伝えしたいと思います。
これからどこでペットを迎えようか迷っておられる方にとっては、特に役立つ内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。
犬猫販売をしている日本のペットショップの真実
ここからは、日本のペットショップが抱えている問題、そして多くの方は知らない真実をお伝えします。
社会化期の重要性を軽視している
犬は生まれてから最低8〜10週間は、母犬や兄弟犬と一緒に暮らすことが強く勧められています。
なぜなら、この時期に母犬や仲間から社会性を学ぶからです。
健全なコミュニケーションの仕方、自分の好奇心を満たすこと、愛情をたっぷり受けることで育まれる自尊心など、大人に必要不可欠な特質は、この時期に学んでいくことが非常に重要なのです。
多くのペットショップでは、早い段階から親と離されてしまうので、この大切な時期に学ぶべきたくさんのことがどうしても欠落してしまいます。
研究によると、ペットショップの子犬とブリーダーの子犬の行動の違いが明らかになっています。
母犬や兄弟から早い時期に離された犬は、そうでなかった犬に比べて人間や他の犬への攻撃性が高く、分離不安等の問題を抱える可能性が高くなっています。
これはつまり、ペットショップで売られている犬猫はおおよそ問題を抱えやすい傾向にあり、ペットショップは社会化期の重要性を軽視していると言わざるを得ないでしょう。
病気にかかりやすい環境である
ペットショップの子犬は、犬や人に影響を与えるさまざまな病気にかかりやすいことでも憂慮されています。
親や兄弟の情報が不透明になりがちなペットショップは、先天性の病気や脳の異常などを受け継いだ犬猫を販売していることが少なくないのです。
さらに2021年の研究では、食中毒の原因になるカンピロバクターの感染例のなんと88%が、ペットショップの子犬と接触した人から発生していることがわかりました。
参考: pet insurance firm study – The Mainichi
殺処分の大元になっている
2023年時点の日本全国で、新規で購入された犬は約4000頭、新規で購入された猫は約3700頭いました。
これは飼育総数ではありません、新しく購入された頭数です。
そして2023年、保健所で引き取られた犬猫の頭数は52,793頭、そのうち殺処分されてしまった頭数は11,906頭でした。
殺処分数のうち幼齢個体は6000頭を優に超えていました。
ここから分かるのは、需要と供給のバランスが明らかにおかしいということです。
つまり、売る量が多すぎるのです。
もちろんこの数字はペットショップだけでなく、ブリーダーや一般家庭での非対策による繁殖も含まれているでしょう。
しかし、冒頭でお伝えしたように、多くの人はペットショップで犬猫を購入しています。
ペットショップで売られていたうちの多くの犬猫が、殺されているのです。
本当に残念ですね。
皆さんもよくご存じのように、良い買い物をするのに大切なことは、よく考えることです。
自分の生活に本当に合っているか、ランニングコストは維持できるかなどです。
よく考えて買わないと、後で後悔することになります。
家や車など、大きな買い物をするときは特に注意するかもしれません。
ペットに関しても同じことが言えます。
ペットは命なので、「やっぱりいらない」では済まされないのです。
しかし、皮肉なことに”可愛い”犬猫が欲しい人々にとって、ペットショップは”衝動買い”をするのに最高の場所になってしまっています。
参考:Ministry of the Environment_Statistical Data
海外で犬猫の販売は禁止されている理由
さて、ペットショップで犬猫を販売することには、たくさんの憂慮する点があることをお伝えしました。
経済的な先進国を誇ってきた日本ですが、実は動物愛護の点では後進国と言わざるを得ません。
というのも、海外の多くの国や地域では、すでに犬猫の販売は禁止されているからです。
具体例を見ていきましょう。
アメリカ
2017年に世界で初めて犬猫の販売禁止を実施したのは、アメリカのカリフォルニア州です。
他にもニューヨークでは、2024年に犬猫ウサギの販売を禁止する法案が可決されました。
ローゼンタール下院議員は、「ニューヨーク州は、全米の残酷で非人道的なパピーミル(利益のためにペットを繁殖させ続けるブリーダー)がペットショップに供給し、動物虐待や無知な消費者から利益を得ることをもはや許さない」と述べています。
イギリス
イギリスは以前から生後8週間未満の犬猫の販売を禁止していました。
そして2018年、認定されたブリーダーや保護施設以外での生後6か月未満の犬猫の販売を禁止する法律が制定されました。
フランス
2021年からフランスでは、ペットを購入するために署名した日から7日間は待たなければならず、18歳未満でペットを購入する場合は親の同意書が必要になりました。
そして2024年からは、ペットショップで犬猫の販売が禁止されます。
ペットを手に入れたい時は保護施設から譲り受けるか、ブリーダーから購入するしか方法がなくなります。
ドイツ
ドイツのペットショップではそもそも犬猫は販売されていません。
というのも、ペットはブリーダーか保護施設から迎えるという文化が昔から浸透しているからです。
国内に大きな保護施設組織がいくつも存在しているので、ペットショップビジネスが成り立たない構造になっているという側面もあります。
ペットを家族に迎えたい人は、専門家によるトレーニングを受けるというステップを踏まなければいけません。
日本が犬猫の販売禁止に踏み込めない要因
ここまでで、海外と日本のペット事情は大きくかけ離れているということが分かりました。
上記に挙げた国はごく一部で、ほとんどの先進国はペットの販売を禁止、もしくは規制方向にすでに進んでいます。
では、なぜ日本は犬猫販売を禁止しないのでしょうか?
その理由を以下にお伝えします。
子犬と子猫が売れるから
犬や猫はおよそ半年から1年で大人の体つきになります。
確かに子犬や子猫のあどけない仕草は本当にかわいいものです。
この短い期間が一番売れるというのも納得です。
ペットショップでは、子犬や子猫しか販売されていません。
そして、ほとんどの人は犬や猫をペットショップから購入しているという事実からも、日本ではペットショップの需要がまだまだ高いという現状が読み取れます。
参考:Pet Acquisition by Age Group
売れ残りの行方を知らせていないから
ペットショップで売れ残った犬猫はどうなるのでしょうか?
運が良ければペットショップで看板ペットとして飼われますが、ほとんどの売れ残った犬猫たちは他のペット販売業界をたらいまわしにされます。
その間にももちろん犬猫の体はどんどん成長していくので、売れる確率は低くなっていきます。
最終的には動物実験として売却されるか、闇ブローカーや有料引取屋の手に渡り殺処分されてしまうのです。
残酷で目を背けたくなるような話ですが、ペットショップは売れ残った犬猫がどうなるのかということを顧客に伝えることはしません。
なぜならこの事実を伝えると、ペットショップビジネスが成り立たなくなってしまうからです。
日本も近いうちに犬猫販売が禁止になるといえる理由
海外のほとんどの国ではペットの販売が禁止されているのに、日本ではペットショップの人気が依然として高いということがわかりました。
でもこう考える方もおられるかもしれません。
「そもそも日本と海外では価値観も文化も違うんだから、海外の真似なんてしないで日本は日本のやり方を貫けばいいんじゃない?」
皆さんはどう思われますか?
これからご紹介する資料やデータを見ると、どうやらそうでもないようだと理解できるでしょう。
日本のペット業界は、近いうちに海外の足跡をたどって歩んでいくと予想されます。
ペット関連の免許取得が厳しくなった
今までもペットに関する職業に従事するためには、資格が必要でした。
しかし、国内で愛護精神が高まるにつれ、動物愛護法は年々厳しくなっています。
そのため、以前より簡単に動物を扱う仕事に就けなくなってきました。
それに含まれいるのがショップやブリーダーです。
これらの職種に従事するには「動物取扱責任者」の資格を取る必要があります。
また、令和2年6月1日施行の改正動物愛護管理法により、動物取扱責任者の資格要件が変わりました。
獣医師、国家資格動物看護士、専門性のある社会法人等の資格保有+実務経験(第一種動物取扱業者で6ヶ月以上)、専門学校や獣医大学を卒業+実務経験(第一種動物取扱業者で6ヶ月以上)が必須になりました。
改正前は、資格、実務経験、卒業のいずれかがあれば動物取扱責任者の要件を満たしているとされていたのに対して、今は資格と実務経験の2つが必要です。
現在ひとつの要件により動物取扱責任者となっていても、施行後3年間のうちにもうひとつの要件を満たす必要があります。
これを満たさずに事業をしていた場合、免許はく奪に加え、罰金や罰則が課せられることになります。
参考:Regulation of the Animal Handling Industry
動物虐待の罰則規制強化
令和2年6月1日から、動物の殺傷に関する罰則について、懲役刑の上限が2年から5年に、罰金刑の上限が200万円から500万円に引き上げられました。
虐待及び遺棄に関する罰則については、100万円以下の罰金刑に1年以下の懲役刑が加わります。
ちなみにフランスでは、法律に違反しペットを虐待死させた場合は、最大で禁錮5年、罰金75,000ユーロ(約970万円)が科せられます。
参考:Laws and regulations related to animals in each country
注目したいのは、罰せられる法律の数です。
海外は様々な角度からの法律で動物が守られているのに対して、日本は動物愛護法だけです。
今後日本の法律が海外のように調整されれば、罰則や罰金の額がグンと上がるでしょう。
保健所の犬猫引き取り拒否権の発行
令和2年6月1日から都道府県等は、所有者の判明しない犬猫の引取りを、引取りを求める相当の事由がないと認められる場合には、その引取りを拒否することができるようになりました。
引き取りが拒否できる事由には、犬猫販売事業者からの依頼、繰り返される引き取り依頼、保健所からの繁殖制限指導に従わなかった場合の依頼、老齢や病気が理由の依頼、飼育が困難と認められない理由の依頼などが含まれます。
「売れ残っても保健所にもっていけば何とかしてくれる」が通用しなくなったことは、今後のペット繁殖業に大きな影響を与えるでしょう。
ちなみにドイツは殺処分0をほとんどクリアしています。
これは、保護シェルターや認定ブリーダーの組織的拡大が強く関係しています。
もし日本でもペットショップではなく保護施設に注目が集まれば、犬猫の需要と供給のバランスが取れて、”売れ残り”という概念がなくなるかもしれません。
マイクロチップの義務化
令和4年6月1日から、犬猫等販売業者は犬猫を取得した日から30日を経過する日までに、犬猫にマイクロチップを装着しなければいけなくなりました。
マイクロチップは犬猫が災害などで迷子になったとき、非常に有効です。
首輪をしていなくてもすぐに身元が分かるので、図らず保健所で殺処分されるということを防げます。
現在日本の法律では、犬猫が生後8週齢未満では販売できないので、必ずマイクロチップを装着することが義務になります。
もしマイクロチップを装着せずに販売する繁殖業者に出会ったら、そこは無認可無登録の悪質業者だと疑っていいでしょう。
そこで犬猫を購入するのはやめましょう。
ちなみにオランダでは2012年、アイルランドは2015年、イギリスでは2016年にはすでに犬に対するマイクロチップの使用と登録が義務付けられています。
参考:Ministry of the Environment
まとめ
日本のペットショップでは犬猫が販売されていますが、海外の多くの国ではすでに廃止されているということが分かりました。
子犬や子猫はとてもかわいいですが、その裏では売れ残った犬猫がたくさん殺されているという悲しい背景もお伝えできました。
犬や猫を愛しているのはペットショップで働いておられる方もきっと同じだと思います。
でも日本のペットビジネスの仕組みが大きく変わらない限り、この命の消費という悪循環は続いていくのかもしれません。
この悪循環をとめるのは、犬猫を購入しようとするわたしたちの意識です。
そして世界では、犬猫をどこで購入するかの選択が以前とは大きく変わってきているという事実があります。
ペットは私たちに愛情をくれる貴重な存在です。そんなペットをどうしたら守ってあげられるのか、真剣に考えたいものです。
ペットの可愛い”今”だけに目をとめず、大切な”将来”を見つめていきましょう。