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ツシマヤマネコ

ツシマヤマネコを守りたい!~絶滅危惧種と人間が共存するために~ 

目次

※当記事は2022年2月17日に掲載した記事を一部編集して再掲載した記事となります。

こんにちは、チアセブンアーチ編集部 狩生です。

先日は長崎県の離島、対馬へ行ってきました。対馬旅行の目的はなんといってもツシマヤマネコです。私は野生動物が好きだったこともあり、私のお世話になっている方が仕事で以前ツシマヤマネコに関わる取材を行っていたため、ツシマヤマネコ保全に全身全霊で活動をされている方をご紹介いただきました。

そんなこともあって、今回の対馬旅行では本当に貴重な体験をすることができました。当記事では、私の対馬旅行を辿りながらツシマヤマネコについて共有をさせていただきます。

今回、お会いした方は対馬市役所のSDGs推進部でお勤めされている前田剛さん。前田さんは以前は対馬野生生物保護センターでご勤務をされ、その前職では沖縄県のイリオモテヤマネコ保全の活動もされていたそうです。当日は市役所にお招きをいただき、ツシマヤマネコ保全の取り組みについてレクチャーいただきました。

今回は、そのお話をもとにツシマヤマネコについてご紹介させていただきます。

対馬ってどんなところ?

対馬
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生


長崎県の離島である対馬市は、朝鮮半島と九州のちょうど真ん中あたりに位置し、約416の離島によって成り立っています。対馬市の森林面積は約89%を占めていることから、約4000もの生物が生息するという生物多様性を保存している島でもあります。このような好条件が整った対馬にはツシマヤマネコだけでなく、国の天然記念物に指定されているツシマテンやツシマウラボシシジミといわれるチョウを含む多様な貴重な動植物が生息しています。

しかし、近年の開発やシカの食害によって個体群は激減し、絶滅危惧種に指定されている生物もいくつか存在しています。これらの生物は、対馬市によって保全活動が行われていますが、ツシマヤマネコに限り環境省によって保全されています。

ツシマヤマネコとは

ツシマヤマネコとは日本の対馬列島にのみ生息している生物で、分類学上ではベンガルヤマネコの亜種アムールヤマネコの地域個体群とされています。ツシマヤマネコは、約10万年前までは、朝鮮半島と対馬が陸続きだった頃に、大陸から渡ってきたと考えられています。ツシマヤマネコは1994年に絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(「種の保存法」)にもとづく国内希少野生動植物種に指定され、日本版レッドリスト(環境省編)では、最も絶滅の恐れの高い、絶滅危惧種IAに分類されています。

ツシマヤマネコ
野生生物保護センターで保護されている「かなたくん」

ツシマヤマネコ成体の体重は3〜5㎏、体長は50〜60cmでイエネコとほとんど同じです。特徴としては体全体の斑点模様、額の縞、太くて長い尾や耳裏の白斑(虎耳状斑)があります。島民はよくイエネコをツシマヤマネコと間違われるそうなのですが、イエネコと見分ける際にポイントとなるのが、この耳裏の白斑模様となります。

そんなツシマヤマネコですが、現在野生として残っているツシマヤマネコの個体数は推定90〜100頭といわれています。

この数をどのように出しているのかというと、一匹一匹個体を数えているわけではなく、設定した調査ルートにおける痕跡調査で得られた糞情報をもとに、地域区分別の密度指数(糞数/km)を算出することにより相対的な生息密度を把握しています。

環境省が主体となって密度分布図(下図)を作成し5年に1回の生息状況調査をしています。

ツシマヤマネコ生息データ
画像引用元:ツシマヤマネコ生息状況等調査(第四次特別調査)の結果概要について 図4
ツシマヤマネコの生息情報
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

また、対馬の空港やレンタカーの場所、人々が集まる場所にツシマヤマネコの生息情報を環境省が設置していました。

ツシマヤマネコ減少の原因

対馬は主に上島と下島で分かれており、ツシマヤマネコが主に生息するのは上島になります。1960年代時点での生息数は250〜300頭と推定されており、対馬全域に生息をしていました。しかし、1970年代は対馬市も高度経済成長の影響により、拡大造林や道路建設等の開発やライフスタイルの変容に伴い、人間活動が加速され自然環境にも影響を及ぼしたことが原因により、特に下島ではツシマヤマネコの個体数が激減しました。

一体何がツシマヤマネコを減少させたのでしょうか...?

では、その原因と対策について探っていきましょう!

交通事故

対馬は山が多いことから沢と山の間に道路を切り開いています。特に上島に行けば行くほどそのような山道ばかりでした。このような対馬の複雑に入り組んだ河川や沢が、豊かな水環境を作り出しています。この水が豊かで多様な環境が混在しているところをツシマヤマネコは好むため、沢はヤマネコの餌場となります。

ツシマヤマネコ飛び出し注意
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

沢へ向かうには、ヤマネコは彼らの縄張りである山からその道路を渡る必要があります。その途中で交通事故にあってしまうのです。

統計を取り始めた1992年以降、 これまで127件の交通事故があり、110頭のヤマネコが交通事故により命を落としています。この中には、お腹の中に赤ちゃんがいたものもいたそうです。推定生息数約100頭と考えると、この数字はかなり大きな数字です。

交通事故が増えるタイミングとしては、夏から秋にかけてツシマヤマネコは子育て、子離れの時期になるので、このタイミングで交通事故が増えるそうです。

また、暗くなった山道を運転してみて気づいたのですが、山道には全く街灯がありません。夜は真っ暗でハイライトにしてもなかなか遠くまで視界を広げることができませんでした。急にヤマネコが道路に飛び出して来た時に、自分が実際に反応できるかどうかわかりません。ヤマネコはネコ科です。ネコはクルマと直面したときに恐怖で身動きが取れなくなってしまうといった、万が一のときに“事故を避けられない生態”があると言われています。一般的にネコの交通事故が多いのもこのような理由が原因としてあります。

だからこそ、普段から速度制限を守り、特にヤマネコ多発地域ではいつヤマネコが飛び出してきてもブレーキをかけることができるような速度、時速40kmで運転する必要があります。

このような交通事故の対策として、ヤマネコに関わる道路標識や看板が交通事故の多発エリアを中心に沢山設置されていました。

ツシマヤマネコ注意
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生
ツシマヤマネコ注意
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

また、ヤマネコの交通事故が起きた場所では、このような看板も設置されています。

ツシマヤマネコ事故
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

このような看板を見かけることで、私も気を付けなくてはいけないと意識することができました。しかし、山道の続く対馬をしばらく運転していると、看板が目についてからはっと意識をして速度を落とすなど、なかなか速度40kmを常に意識して運転をすることができない自分がいました。だから、もっとこのような看板をより広範囲に設置することは、ドライバーの注意喚起を強化することに繋がるのではないかとも感じました。

環境省は、看板の設置だけでなくツシマヤマネコの交通事故を減らすために様々な普及啓発物を配布しています。例えば、ヤマネコの交通事故情報や交通事故に遭いやすい場所などが掲載されているエコドライバーズマニュアル、マニュアルとセットで配布される車用ステッカー、ポイントによって配布されるエコドライバー認定ステッカーや認定書、対馬野生生物保護センターの電話番号が記載されたステッカーなどによってドライバーの安全運転促進に力をいれています。

また、対馬野生生物保護センターでは、市民ボランティア団体「ツシマヤマネコ応援団」と協働して道路が水路や小道と立体交差する際に設置される地下道であるカルパートの掃除をしています。草木でふさがれたカルパートを定期的に清掃をすることで、ヤマネコの通り道を作ってあげるのです。すると、ヤマネコは上の道路を渡らずに沢へ向かうことができます。

里地里山の衰退

この、里地里山の衰退がツシマヤマネコ減少の一番の要因であるといわれています。

日本の社会問題でもある少子高齢化は対馬でも著しく進み、若者は都市へどんどん流出しています。これによって後継者は不足し、耕作放棄地が増え、ヤマネコにとって好適な生息環境が減少したことが挙げられています。

対馬では木庭作といわれる焼畑農業や炭焼き等が対馬全土で伝統的に実施されていました。しかし、上記で述べたようなことが原因で、このような伝統的生業が衰退していったことで、ヤマネコにとっての好適環境が減少しています。

一見、木庭作や炭焼きによる野焼きや伐採は環境負荷や生物生息地崩壊に繋がると思う方もいるかもしれません。しかし、これらの生業を定期的に行うことは里山の再生、生態系の回復に繋がっているのです。

炭焼きは、炭を作るために山から木を伐りだすことで、残った切り株から新芽が成長します。また、切り出すことで森に光が差し込むようになり、下草も生えてきます。また、一か所に集中して切り出すのではなく、パッチワーク状に部分的に切り出すことで、明るい森と暗い森を作り出し、様々な環境を作り出します。その結果、ヤマネコの餌となる多様な生物が生息するようになるのです。

今回は、そんな炭焼きを復活させようと活動されている農家さん、内山さん宅で農泊体験をさせていただきました。そして、実際に炭焼き体験の一部を体験することができました。

対馬洞穴
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

炭焼きは、炭を窯にいれて、炭になった木を切り分けるまで約10日間ほどかかります。私は、この最後の工程になる切り分け作業をお手伝いさせていただきました。

炭
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生
炭
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

切り分ける作業は、常にのこぎりを使って全身を使っての作業になるので、本当に体力のいる作業でした。また内山さんは、作業中になんども真っ黒になるけど大丈夫?と心配の声をかけてくれていたのですが、作業が終わってみるとマスクの下の顔まで真っ黒になるくらい体が黒くなっていました。

そんな、炭焼きですが、内山さんがおっしゃるには、今は対馬全土でシカの繁殖が著しく、切り出した木の新芽をシカが全て食べてしまうため、木が成長できず禿山状態になってしまったといっています。だから、炭焼きのやりすぎは良くない、シカを積極的に駆除して適正数にしないといけない、とおっしゃっていました。

内山さんは自身で焼いた炭を出荷し、脱臭炭として販売をしています。

脱臭炭
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

なんと帰る際にプレゼントしていただきました。ツシマヤマネコがデザインされていてとっても可愛いです!

水田の減少

水田はヤマネコに関わらず、食物連鎖を保存し生物多様性保全の観点としても、非常に重要な役割を果たしています。水田には微小なプランクトンから大型生物まで約6000種以上の生物が水田に頼っており、生物多様性の宝庫ともいわれています。

そんな水田が、少子高齢化によって衰退しているのです。

もちろんヤマネコにとっても水田はかけがえのない存在です。ツシマヤマネコは、田んぼの周辺でよく見かけることから「田ねこ」とも呼ばれています。水田は子に狩りを教えたりする子育ての場所であり、ネズミやカエルなどが生息しているため、ヤマネコの餌場でもあります。

なぜ後継者が不足しているのかというと大きな原因に米の安さが考えられます。

そこで、対策としてツシマヤマネコ生息密度の高い佐護地区を中心に、2009年に「佐護ヤマネコ稲作研究会」が発足されました。この研究会が作っているものが「ヤマネコ米」といわれるお米です。ヤマネコ米は、ヤマネコでお米のブランド化をはかり、お米を通常より高く売ることで、農業の収入をあげることに貢献をしています。また、ふるさと納税により支援者を増やし、消費者に問題を理解してもらうような活動をしています。

私は今回の対馬旅行でなんと、この「佐護ヤマネコ稲作研究会」活動の中心人物でもある平山美登さん宅で農泊をすることが叶い、ヤマネコ米について沢山お話を聞かせていただきました。

ヤマネコ米は、ただヤマネコでブランド化を図っているわけではありません。

ヤマネコ米は米を作るときの化学農薬と化学肥料を通常の半分に減らし、減農薬を使うことで環境に配慮をしたお米でもあります。これは消費者にとっても安心できるという面ももちろんありますが、ヤマネコの餌場でもある水田に農薬をなるべく使わずにお米作りをすることは、水田の生物多様性を保全しツシマヤマネコを守ることにも繋がっているのです。

しかし、平山さんが頭を抱えている最大の問題が、圧倒的な後継者不足の問題です。最近は地域おこし協力隊や地域創生に関心を持つ若者が増え、確かに以前より若者は増えているそうですが、第一次産業に直接関わってくれる若者はいないとおっしゃっていました。

地域創生やツシマヤマネコ保全のために活動を積極的に行っていただくことはとてもありがたいことだが、まず根本的にある第一次産業に直接従事する若者を増やす仕組みを作らない限り、過疎化は避けられない、よってヤマネコの保全は困難であると切々と語ってくれました。

平山さんもヤマネコ米をつくるうえで、「ヤマネコを守ってどうなるのか?」という意識が島民の中にはあり、農家の方々がヤマネコを守ることで発生する利益を作ることが根本にはある、とお話しいただきました。

野犬の増加

また、これにも驚いたのですが対馬では野犬の増加がツシマヤマネコ減少にも関わっているそうです。

最近、日本で野犬をみかけることはほとんどないと思っていたのですが、対馬では、狩猟のために対馬へ島外から訪れた猟師の方が連れてきた猟犬の遺棄が問題となっているそうです。島外から訪れる猟師は、限られた時間で狩猟をする必要があります。

ですから、狩り放した猟犬がなかなか戻ってこない場合、その猟犬を置いて島をでていくというのです。そして山に残された猟犬がヤマネコの縄張りを荒らし、ヤマネコを直接的に攻撃し、ヤマネコ減少を引き起こしています。

外来種や別の野生動物の増加

対馬ではシカやイノシシなど他の限定された野生動物の急増により、生態系バランスが崩れているといいます。

2019年度は約5,367頭のイノシシが島内で捕殺されています。この数からも島内でそれだけの数がいるか想像がつくかと思います。イノシシはツシマヤマネコの競合種なため、縄張り争いや餌資源不足により、ヤマネコ減少にも繋がっているそうです。

実は、対馬では今から約300年前まではイノシシは絶滅をしていました。イノシシによる農業被害の対策として、対馬藩で農業振興に尽力した陶山訥庵(すやま とつあん)が中心となって「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」が実施され、9年間の歳月をかけてイノシシを絶滅させたという歴史があります。しかし、約30年ほど前に猟師が猟を楽しむために島外からイノシシを持ち込んだことで、イノシシが野生化し、現在では対馬全域にイノシシが繁殖し、被害が及んでいます。

そして現在は特にシカの繁殖が著しく、島民の方々が危惧しています。シカは木々の新芽を食べるだけでなく、木の皮を食べるので木々は枯れてしまいます。ヤマネコの餌場を奪い、不安定な山を作りだし土砂崩れなどの人身被害にもつながっています。

しかし、ここで忘れてはならないのはイノシシやシカも被害者であるということです。ツシマヤマネコの保全を考えた時に、悪者扱いされてしまうこれらの動物たちも人間による開発によって生息地や餌場を奪われたことに原因があることを忘れてはなりません。

イエネコ由来の感染症

次にイエネコ由来の感染症です。1996年にヤマネコで世界で初めてイエネコ由来と推定される FIV(ネコ免疫不全症 候群ウイルス)陽性、所謂ネコエイズの個体が発見されたことでヤマネコ保全の専門家にとって大きな不安が広がりました。そして2000 年にはヤマネコで2頭目の FIV 陽性個体が発見されています。

こういったイエネコ由来による感染症による感染拡大もツシマヤマネコの減少に繋がっていました。しかし、このネコエイズ発症がきっかけで、九州地区獣医師会連合会はヤマネコ保護協議会を設立し、会員全員が基金を拠出することで対馬市全域を対象に個体登録や不妊化 処置などのイエネコ適正飼育普及活動を開始しました。また、対馬市に初めて動物病院も建設され、ツシマヤマネコへの感染ケースは現在はほとんどないそうです。

ツシマヤマネを守るための活動

対馬の訪れる様々な場所では、ツシマヤマネコ保全を啓発するパンフレットやリーフレットが設置されていました。

ツシマヤマネコパンフレット
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

また、今回ライフワークとしてデザインや地域づくりのアプローチから野生動物保護に関わっている、一般社団法人MITさんをお尋ねしました。MITさんは、M(見つける)・I(いかす)・T(つなげる)部門でコンサルティングやデザインや広報、商品販売など、ツシマヤマネコをシンボルに様々な角度から対馬の生物多様性を保全するために活動されています。

今回は、商品販売部門の商品直売所を訪れました。ヤマネコ米もMITさんが先導してお店で販売をしています。かわいいツシマヤマネコがデザインされた雑貨など、たくさん販売されていました。「ヤマネコ米」も、このMITさんがパッケージのデザインを手がけており、MITさんのお店で取り扱っています。

ツシマヤマネコおみやげ
撮影者:チアセブンアーチ編集部 狩生

最後に、対馬の可愛らしいお土産がたくさん買えてとても満足です。

ここで購入すると、売り上げの一部がツシマヤマネコ保全に関わる寄付にも繋がるそうです。

国としての対策

上記のように、市民レベルで心がけや注意を払うことがツシマヤマネコを守るためにいかに重要であるかおわかりいただけましたでしょうか。

また、国レベルでの対策として1997年に野生生物保護センターが設置され、2013年にはツシマヤマネコ順化センターが設置されました。ツシマヤマネコは、もっとも絶滅の恐れがある動物として保全をされていることもあり、種の保存の観点から環境省と日本動物園水族館協会は2014年に「生物多様性保全の推進に資する基本協定」を締結し保護増殖事業が行われています。ツシマヤマネコの生息域内(対馬島内)と生息域外を連携し、生息域外の全国8箇所の動物園でツシマヤマネコが飼育され、飼育下繁殖を試みています。

今回、順化センターのセンター長として赴任されている環境省の木滑黄平自然保護官と直接お会いしてお話を伺うことができました。飼育下で育ったヤマネコを順化センターに搬入し、センターでの訓練を経て野生へ順化するという取り組みがされています。こちらについては、後に改めて詳しく新しい記事で紹介させていただきます。

まとめ

今回の一番の学びは、ツシマヤマネコを保全するためにはツシマヤマネコだけを見ていてもどうしようもできないということです。これは、前田さんも何度も口にしていたことです。

人間に開発された環境で適応し続けた現代のツシマヤマネコですが、この種の保存ができるかどうかは人間の手にかかっています。現代のヤマネコは人間が開発した水田や生業に頼っているのです。そして、ツシマヤマネコを脅かす原因のほとんどが人間由来のものなのです。市民レベルとして、ツシマヤマネコを守るためにできることを上記にあげてきましたが、やはり市民全員の理解を得て、意識改革をしていくには長い時間がかかります。

平山さんもおっしゃっていたように、島民には「ツシマヤマネコを守ってどうなるのか?」という意識が潜在しています。

結局、人間の生活が優位として考えられている現在、どのようにしてツシマヤマネコに関わらず、人間が野生動物と共存していけるのかという問題があります。

平山さんのヤマネコ米によって、農家の収入をあげることや、消費者に繋がるメリットまで考えていかなければなりません。ツシマヤマネコを保全することで得られる利益やメリットを作っていかなければなりません。

このように、ツシマヤマネコと人間生活が密接している以上、ツシマヤマネコ保全には様々なファクターが複雑に絡み合っています。だからこそ、ツシマヤマネコを見るだけでなく、社会・経済・環境、多方面から様々なアプローチをすることが大切なのです。

最後になりますが、私は人間一人ひとりが人間目線だけでなく、少しでも周りの自然や同じ土地で生息する動物たちのことを配慮した開発、生活をしていくことが一番大切なのではないかと思います。

少しの心がけで救われる命は沢山あると思います。例えば上記であげたカルパート清掃の活動のように、一人ひとりが動物や自然に対するリテラシーを身に着けることができればこの世の中はずっとよくなっていくのではないでしょうか。

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