森の中に立つツキノワグマ。胸に白い三日月模様がある

クマに遭遇したらどうする?100人に聞いた結果と環境省が示す対処法

2026.8.30

目次

「クマに遭遇したら、どうしますか?」
そう聞かれて、すぐに答えられるでしょうか。

環境省の速報値によると、令和7年度(2025年度)にクマの被害を受けた人は238人、うち13人が亡くなりました。令和8年度も4月から7月までの4か月で53人が被害に遭っています。

では実際に出会ってしまったとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。今回は全国100人にアンケートを取り、その答えを環境省の資料と突き合わせてみました。

この記事のアンケートについて

  • 調査方法:インターネットアンケート
  • 対象:日本国内在住の21〜75歳
  • 有効回答:100人(男性53人・女性47人/全国32都道府県)・2026年8月実施
  • ※対処法の解説は環境省の資料に基づいています

100人は「クマに遭遇したらどうする」と答えたか

図1 クマに近距離で出会ったら、どうすると思うか
0 20 40 60 80 刺激せずゆっくり後退する 63 背を向けて走って逃げる 16 その場でじっと動かない・隠れる 9 恐怖で動けない・パニック 5 大声を出す・威嚇する・戦う 5 うつ伏せになり頭を守る 2

単位:人。自由記述を、最初に取ると書かれた行動で分類(1人1分類)。出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)

一番多かったのは「刺激せずゆっくり後退する」で63人でした。

いっぽうで気になるのが、「背を向けて走って逃げる」16人、「恐怖で動けない」5人という結果です。この21人は、身を守れない可能性のある反応をすると自分で答えていることになります。

「死んだふり」を知っている人は93人。でも75人は「間違い」と答えた

クマといえば「死んだふり」。この話を聞いたことがあるかを尋ねたところ、100人中93人が「聞いたことがある」と答えました。ほとんどの人が知っている話だということです。

では、その対処法は正しいと思うか。

図2 「クマに会ったら死んだふり」は正しいと思うか
0 20 40 60 80 間違いだと思う 75 わからない 23 正しいと思う 2

単位:人。出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)

「間違いだと思う」が75人。「正しいと思う」はわずか2人でした。つまり多くの人は、死んだふりが有効ではないことをすでに知っています。

その話は、どこから来たのか

図3 「死んだふり」の話をどこで知ったか
0 10 20 30 40 テレビ・ニュース 32 マンガ・アニメ・映画 21 聞いたことがない・覚えていない 17 家族や親戚から 15 友人・知人から 7 インターネット・SNS 5 学校の先生や授業で 3

単位:人・単一回答。出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)

一番多かったのはテレビ・ニュースで32人。そして2番目に多かったのがマンガ・アニメ・映画で21人でした。

いっぽう、学校の先生や授業で知ったという人は3人しかいませんでした。クマへの対処法は、学校で教わるものというより、テレビやフィクションを通じてなんとなく広まっている知識だということが見えてきます。

どこで知ったかで、答えが変わっていた

情報源ごとに、自由記述の答えを見比べてみました。

表1 「死んだふり」をどこで知ったか別に見た、正しい対処を答えた割合
どこで知ったか人数「刺激せず後退する」と答えた人
マンガ・アニメ・映画21人16人(76%)
家族や親戚から15人10人(67%)
テレビ・ニュース32人18人(56%)
学校の先生や授業で3人0人(0%)

出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)。人数の少ない項目があるため参考値です。

意外なことに、マンガ・アニメ・映画で知った人のほうが、正しい対処を答えた割合が高い(76%) という結果でした。テレビ・ニュースで知った人は56%にとどまります。

ただし、それぞれの人数が多くないので、これだけで「フィクションのほうが正確に伝えている」と言い切ることはできません。少なくとも娯楽から得た知識だから不正確だ、とは限らないことは言えそうです。

環境省が示している対処法

山道の真ん中に立ち、こちらを見ているツキノワグマ
見通しの悪い山道を曲がった先で、突然この距離になることがあります

では実際のところ、どうするのが正しいのでしょうか。環境省の資料には、クマとの距離ごとに取るべき行動が書かれています。

クマに出会ってしまったら(環境省の資料より)

  • 距離が離れていて、クマが気づいていない:ゆっくりと静かに立ち去る
  • 比較的距離が近い(50mほど):両腕をふって存在を知らせ、クマから目を離さずにゆっくりと静かに後退する
  • 距離が近い(20mほど):走ったり大声を出したりせず、クマから目を離さずにゆっくりと静かに後退する
  • 突進してきた(威嚇突進):途中で止まって引き返すことが多い。落ち着いて、間に障害物がくるようにゆっくり後退する
  • 本当に攻撃してきた:クマスプレーを目や鼻をめがけて噴射する。スプレーがない場合は防御姿勢をとる

出典:環境省 自然環境局「クマを知って事故を防ごう!」(2016年9月) https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5/docs5-kuma.pdf

距離が変わっても共通しているのは、走って逃げないことという点です。マニュアルには理由もはっきり書かれています。

環境省の資料より

クマは逃走する対象を追いかける傾向があるので、背中を見せて逃げ出すと攻撃性を高める場合があります。そのため、クマを見ながらゆっくり後退する、静かに語りかけながら後退する、など落ち着いて距離をとるようにします。慌てて走って逃げてはいけません。

環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」令和3年3月

「刺激せずゆっくり後退する」と答えた63人は、この資料とほぼ同じことを書いていたことになります。半数を超える人は、正しい対処法をすでに知っているわけです。

突進してきても、本当の攻撃とは限らない

意外に思われるかもしれませんが、クマが突進してきても、それが本気の攻撃ではない場合があります。

これは「威嚇突進(ブラフチャージ)」と呼ばれるもので、すぐ立ち止まっては引き返す、という動きを見せることがあります。環境省のマニュアルには、この場合は落ち着いて距離をとることで、やがてクマが立ち去る場合があると書かれています。

とはいえ、突進してくるクマを前に「これは威嚇だ」と冷静に判断するのは簡単ではありません。どちらであっても、間に障害物がくるようにゆっくり後退するという対応は変わらないということです。

子グマを見かけたら、近くに必ず母グマがいます

もうひとつ、特に気をつけたいのが親子連れのクマです。

母グマは子グマを守ろうとして攻撃的になりやすく、より一層の注意が必要とされています。そして子グマが1頭だけでいるように見えても、すぐ近くに母グマがいる可能性が高いです。

かわいらしく見えても近づかず、速やかにその場を離れる。これが鉄則です。

「うつ伏せ」は間違いではありません

ここは分けて考える必要があります。うつ伏せになること自体は、公式に推奨されているのです。環境省のマニュアルには、襲われてしまった場合についてこう書かれています。

環境省の資料より

顔面・頭部が攻撃されることが多いため、両腕で顔面や頭部を覆い、直ちにうつ伏せになるなどして重大な障害や致命的ダメージを最小限にとどめることが重要です。

環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」令和3年3月

つまり、遭遇した時点で寝転がるのが間違いで、実際に襲われた瞬間に頭と顔を守るのは正しいということです。「死んだふり」という言葉が、この2つをひとまとめにしてしまっているのかもしれません。

今回のアンケートにも、この違いに気づいていた方がいました。

アンケート回答者 55歳・女性・鳥取県

クマに襲われて命を落とした人の多くが顔を攻撃されていて、うつ伏せなどで顔を隠した人は助かっている、という話を見聞きしました。昔から「死んだふり」と言いますが、ある意味正しいのかもしれないと思いました。

ツキノワグマは、一撃を与えると逃げることが多い

防御姿勢が意味を持つ理由が、マニュアルにもうひとつ書かれています。

クマは上腕で引っ掻く、噛みつくといった攻撃をしますが、ツキノワグマの場合は一撃を与えた後、すぐに逃走することが多いとされています。

最初の一撃をどこで受けるか。それが結果を分けるということです。顔と頭を腕で覆う姿勢には、はっきりした意味があります。

ただし、マニュアルには「攻撃を回避する完全な対処方法はありません」とも明記されています。姿勢を取れば安全になるわけではありません。

クマスプレーを挙げた人は、100人中5人だけ

登山ザックのショルダーストラップに付けられた真鍮のクマ鈴
クマ鈴やスプレーに触れた人は、100人中5人だけでした

自由記述のなかで、クマよけスプレー・鈴・笛といった専用の道具に触れた人は5人でした。傘や木の枝など、その場にある物を使うと書いた人を含めても11人です。

9割近くの人は、道具のことをそもそも考えていないということになります。

ではクマスプレーがあれば安心かというと、そう単純でもありません。マニュアルには、使ううえでの注意がいくつも並んでいます。

クマスプレーを使うときに知っておきたいこと

  • 唐辛子成分(カプサイシン)が粘膜を刺激する。クマの顔、目や鼻をめがけて噴射する
  • 射程は5mほどと短い製品が多い。十分に引きつけてから噴射する必要がある
  • 下草が背丈ほど茂った場所では、うまく噴射できず効果が期待できないことがある
  • 風向きによっては自分にもかかる。それでも躊躇せず噴射することが重要
  • 咄嗟に使うのは難しい。トレーニング用スプレーで事前に練習しておく

出典:環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」(令和3年3月) https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/

射程5mということは、クマがかなり近くまで来てから使う道具だということ。ここまで読むと、持っているだけでは足りないことがよく分かります。

知っていても、できるとは限らない

もうひとつ、この調査でいちばん印象に残ったことがあります。

正しい対処法を知っているのに、実行できる自信がないと自分で書いた人が8人いたことです。

アンケート回答者 32歳・男性・兵庫県

背中を向けるのは危険だと分かっていても、あまりの恐怖心に逃げ出すと思う。

アンケート回答者 52歳・女性・兵庫県

クマの目を見て後ずさりするのが正しい対処法と聞いたことがある。ただいざとなったらとにかくクマから少しでも距離を取りたいと思うので、力いっぱい走り出してしまうはず。

アンケート回答者 45歳・女性・和歌山県

動かないのがいいと聞いたことがあるが、無理。怖さから、大声を出して威嚇して、逆に狙われそう…。どうすればいいのか、具体的に何も浮かばない。

知識として知っていることと、その場で体が動くことは別だということですね。実際に「恐怖で動けないと思う」と答えた人も5人いました。だからこそ、そもそも出会わないようにすることが大切になります。

先が見えないほど急に曲がる、朝もやの山道
先が見えない場所こそ、声や音でこちらの存在を知らせたいところです

クマに出会わないために

  • クマ鈴やラジオなど、音の出るものを持ち歩く
  • 見通しの悪い場所や沢沿いなど音が聞き取りにくいところでは、声を出したり手をたたいたりして存在を知らせる
  • 目撃・出没情報が出ている場所には近づかない
  • フンや食べ跡、爪痕など新しい痕跡を見つけたら引き返す
  • 子グマを見かけたら、近くに必ず母グマがいると考えてすぐに離れる
  • 春と秋は事故が多くなる傾向があるので特に注意する

出典:環境省 自然環境局「クマを知って事故を防ごう!」(2016年9月) https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5/docs5-kuma.pdf

実際にクマを見たことがある人は、7人だけ

今回の100人のうち、野生のクマを見たことがあると答えたのは7人でした。ヒグマが5人、ツキノワグマが2人です。

この7人の答えを見ると、5人が「刺激せずゆっくり後退する」、2人が「恐怖で動けない」。1人も「走って逃げる」とは答えていません

アンケート回答者 53歳・男性・北海道

17年ほど前の話ですが、息子と会社の同僚と3人でクワガタを採りに山に入ったのですが、途中で動物園のような臭いがしたので立ち止まっていたら、10メートル先くらいにヒグマが現れてあまりの恐怖に動けなくなった経験があります。ヒグマはこちらを見て、そのままゆっくりと歩いて行きました。

人数が少ないので断定はできませんが、実際にあの大きさを目の前にした人ほど、走って逃げるという選択肢が消えるのかもしれません。

いっぽうで、野生動物を何かしら見たことがある79人と、どれも見たことがない21人とで、正しい対処を答えた割合はほとんど変わりませんでした(63%と62%)という結果でした。野生動物を見慣れているかどうかと、クマへの備えは別のようです。

回答者の内訳

表2 今回の回答者
項目内訳
人数100人
性別男性53人/女性47人
年代20代5人/30代21人/40代40人/50代23人/60代9人/70代2人(平均46.4歳)
住んでいる地域全国32都道府県。兵庫13人・東京11人・大阪10人・北海道9人の順に多い
調査方法インターネットアンケート(2026年8月実施)

出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)

男女で比べると、「走って逃げる」と答えたのは男性21%、女性11%という差がありました。

まとめ

今回は、100人アンケートの結果と環境省の資料から、クマへの対処法を見てきました。

環境省の資料が示しているのは、距離を問わず走らずにゆっくり後退すること、襲われたら顔と頭を覆ってうつ伏せになることという2つです。アンケートで前半にたどり着けていたのは63人、逆に走って逃げると答えた人が16人でした。

「死んだふり」を知っている人は93人もいるのに、学校で習った人は3人だけ。知っているのに、きちんと教わってはいない。このずれが、いざというときの迷いにつながっているのかもしれません。

クマは本来、人を避けて暮らしている動物です。事故の多くは、お互いに気づかないまま急に出会ってしまったときに起きています。鈴を鳴らして、先にこちらの存在を伝えることが、いちばん確実な備えになります。

クマそのものについては森から町へ来るクマたちや、九州にクマがいない理由もあわせてご覧ください。

出典:環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」(令和3年3月) https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/

出典:環境省「クマの人身被害件数[速報値]」 https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html

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