コウモリが家に来るのはなぜ?100人調査でわかった身近さと、正しい追い出し方
2026.8.30
目次
夕方、家のまわりをひらひらと飛ぶ黒い影。雨戸の戸袋からカサカサと音がする。窓から何かが飛び込んできた——。
日本に暮らす100人に「これまで野生で見たことがある動物」を聞いたところ、1位はコウモリの55人でした。しかもその多くが、山ではなく自分の家での目撃です。
なぜコウモリは家に来るのか。そして家に住みついてしまったとき、自分で駆除してはいけない理由があります。この記事では、その両方をご紹介します。
この記事のアンケートについて
- 調査方法:インターネットアンケート
- 対象:日本国内在住の21〜75歳
- 有効回答:100人(男性53人・女性47人/全国32都道府県)・2026年8月実施
- ※コウモリの生態と法律の解説は、自治体および国立環境研究所の資料に基づいています
野生動物の目撃1位は、シカでもタヌキでもなくコウモリ

まず、100人が「野生で見たことがある」と答えた動物の上位です。
単位:人・複数回答。出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)
コウモリが55人で1位。シカ35人、タヌキ34人を大きく引き離しています。
意外に思われるかもしれませんが、理由は「どこで見たか」を見ると分かります。
コウモリの目撃は、9割近くが「家」
自由記述でコウモリの体験を書いてくれた13人について、どこで見たかを分類しました。
単位:件。自由記述を1件1分類。出典:本記事のアンケート(2026年8月・有効回答100人)
13件のうち9件が自宅・家のまわりでの目撃。つまりコウモリは、山に会いに行く動物ではなく、暮らしのなかに入ってくる動物だということです。
今年の夏、窓からコウモリが家の中に入ってきた。スズメと鳩の中間くらいの大きさがあり部屋の中を飛び回って家中パニックになった。鳥と違い羽音は全くしなかった。家じゅうの窓やドアを開け追い出すことができた。
一時期、自宅の雨戸に蝙蝠が棲みついていた。夜、就寝中に窓の方からゴソゴソ音がするので、最初は何かと思った。
小学生のとき洗濯物にこうもりが付いていたことがある。逆さだったかは覚えていないけど、張り付いてとまっていた。
家に来るのは「アブラコウモリ」
日本には約35種のコウモリがいますが、人の家に住みつくのは、ほとんどがアブラコウモリという種類です。イエコウモリとも呼ばれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Pipistrellus abramus |
| 体長 | 50mm程度(5cmほど) |
| ねぐら | 建造物や洞窟 |
| えさ場 | 公園・農地・河川・ため池など開けた場所 |
| 食べもの | ガ・ハエ・カメムシ・ハチ・甲虫などの昆虫 |
| 繁殖 | 10月に交尾し、妊娠期間は70日程度。1回に2〜4頭を産む |
| 分布 | 本州・四国・九州と周辺の島。北海道は函館市に侵入分布 |
出典:国立環境研究所 侵入生物データベース「アブラコウモリ」
注目したいのは体長です。5cmほどしかありません。この小ささが、家のわずかな隙間から入り込める理由になっています。
なぜ家に来るのか
答えはシンプルで、アブラコウモリのねぐらが「建造物や洞窟」だからです。
もともと洞窟や樹洞をねぐらにしていた動物にとって、屋根裏・戸袋・軒下・換気口といった暗くて狭い空間は、洞窟とよく似た住み心地の場所です。
しかも、えさ場として好むのは公園・農地・河川・ため池といった開けた場所。街灯に虫が集まる住宅街は、そのままえさ場になります。住宅街はコウモリにとって、寝床とえさ場が近い便利な環境なのです。
じつは、かなり虫を食べてくれている

嫌われがちなコウモリですが、食べているのは昆虫です。
朝倉市の資料によると、1頭のコウモリが1日に食べる虫の量は、蚊くらいの大きさの昆虫で約500匹とされています。
夕方に家のまわりを飛び回っているコウモリは、蚊やガを食べてくれている最中、ということになります。
出典:朝倉市「コウモリについてのお知らせ」 https://www.city.asakura.lg.jp/soshiki/14/1284.html
⚠️ 勝手に駆除すると法律違反になります
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
コウモリは鳥獣保護管理法で保護されていて、捕獲も殺傷も禁止されていますです。
コウモリを自分で駆除してはいけない理由
- 野生のコウモリは鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)により、捕獲・殺傷が禁止されています
- 違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます
- 捕獲するには都道府県の許可が必要です
- 市区町村は駆除や捕獲を行っていません。追い払いや侵入予防は、自分または業者で対応することになります
出典:つくばみらい市「コウモリを見かけたら」 https://www.city.tsukubamirai.lg.jp/jyumin/gomi-kankyou-doubutsu/pet/page006934.html
「家に入ってきたから叩いて追い出した」という話をよく聞きますが、うっかり傷つけてしまうと法律に触れることになりかねません。殺してしまうと違反です。
正しい対処は「追い出して、塞ぐ」
捕まえられない以上、できることは決まっています。居心地を悪くして出ていってもらい、二度と入れないように隙間を塞ぐという2段階です。
コウモリに出ていってもらう手順
- ①住み心地を悪くする:屋根裏なら煙の出るタイプの害虫駆除剤を置く。市販の忌避剤を置く、ライトアップするなどの方法もあります
- ②いなくなったのを確認する:軒下にいる場合は、コウモリがいない時に(または追い払ってから)作業します
- ③侵入口を塞ぐ:ネット(網)やパテ、シーリング材で隙間をふさぎます
- ④手に負えないときは業者へ:市区町村は駆除を行っていません
出典:北九州市「よくある相談と対策【コウモリ】」 https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/27500013.html
実際に、今回のアンケートにもこの手順どおりに対処した方がいました。
夕方に住宅地を飛び交うコウモリを数匹見たが、自分の家から飛び出しているようで、雨戸の戸袋を巣にしているようだったから叩いて追い出し、板でふさいだ。
やってはいけない時期がある
追い出しには、避けるべき時期があります。
冬眠時期と、夏の出産時期です。
冬眠中は動けないので出ていってくれません。夏の出産・子育て期に親を追い出すと、飛べない子どもが取り残されてしまいます。塞いだ内側で死んでしまえば、においや害虫の原因にもなります。
北九州市の資料でも「冬眠時期及び夏の出産時期は追い出しが難しいため、それ以外の時期に対策を行う方が効果的です」とされています。
素手で触らない
もうひとつ、必ず守りたいことがあります。
コウモリにも、その糞にも、素手で触らないことです。つくばみらい市は「野生のコウモリには、寄生虫や感染症の原因となる菌やウイルスが付着している恐れがあるため、素手で触らないようにしましょう」と呼びかけています。
弱っている個体や、落ちている子どもを見つけても同じです。手袋を使う、道具で移動させるなど、直接触れない方法をとってください。
昔より見なくなった気がするのは、本当?
ここからは、この記事を書いている私自身の話です。
私は大阪の吹田市で育ちました。小学生だった1990年代の後半、夕方から夜にかけてコウモリが飛んでいるのは当たり前の光景でした。保育園や小学校の屋根のところにとまっているのも、何度も見ています。
それが、社会人になった2010年代のはじめごろから、そういえば見なくなったな、と感じるようになりました。今は大阪市西区に住んでいますが、ほとんど見かけません。
同じように感じている方もいるのではないでしょうか。では実際に、コウモリは減っているのでしょうか。
増えたのか減ったのか、じつは誰も知らない
調べてみて分かったのは、アブラコウモリが増えているのか減っているのかを示すデータが見当たらないということでした。
環境省レッドリスト2020の哺乳類のリストを見ると、日本のコウモリは25種と7つの地域個体群が載っています。ヤマコウモリ、クビワコウモリ、オヒキコウモリ、ホンドノレンコウモリ——すでに絶滅したとされるものも含まれています。
ところが、私たちの家にいるアブラコウモリは、このリストに載っていません。絶滅が心配される希少種ではない、という扱いです。
身近な動物ほど、数が分からない
- 絶滅が心配される種は、国や自治体が調査してリストにまとめています
- アブラコウモリのようなごく普通に見られる種は、その対象になりません
- 結果として、もっとも身近なコウモリの増減が、いちばん分からないということが起きています
「都市部では増えている」という説明も見かけますが、出どころをたどると根拠のはっきりしないものが多く、増えたとも減ったとも言えないというのが正直なところです。
餌が減っている可能性は、指摘されている
ただし、コウモリの餌である夜の虫については、気になる研究があります。
国立環境研究所が紹介している、イギリス自然環境研究会議(NERC)が助成した研究です。街路灯をナトリウム灯からLEDに替えると、昆虫の個体数が半減するという結果が出ています。イギリスの蛾の生息数は、過去50年で3分の1に減ったとも報告されています。
コウモリは1日に蚊くらいの虫を約500匹食べる動物です。餌が減れば、そこにいられなくなるのは自然なことでしょう。
とはいえこれはイギリスの研究で、コウモリへの影響を直接調べたものではありません。日本の街でも同じことが起きているかどうかは、まだ確かめられていません。
出典:国立環境研究所 環境展望台「イギリス自然環境研究会議、LED街路灯が昆虫の個体数を半減すると指摘」(2021年8月26日) https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=32397
だからこそ、みんなの記憶が手がかりになる
今回のアンケートでも、コウモリの体験は「小学生のとき」「一時期」といった、過去を振り返る書き方が目立ちました。
ただしこれも減少の証拠にはなりません。印象的な出来事ほど記憶に残って書かれやすいので、古い話が多いことが減少を意味するわけではありません。
数えられていない動物の変化を知る手がかりは、そこに住んでいる人の記憶しかないのかもしれません。あなたの住む街では、コウモリは今も飛んでいるでしょうか。
まとめ
100人調査で目撃1位になったコウモリについて見てきました。
55人が見たことがあり、その目撃の多くは山ではなく自宅。家に来るのはアブラコウモリという体長5cmほどの種類で、建造物をねぐらにする習性があるため、屋根裏や戸袋が洞窟の代わりになっています。
そして、捕まえることも殺すことも法律で禁じられています。できるのは、住み心地を悪くして出ていってもらい、隙間を塞ぐことです。冬眠期と夏の出産期は避け、素手では触らない。
厄介な相手ではありますが、1日に500匹もの虫を食べてくれる隣人でもあります。追い出すにしても、正しいやり方で向き合いたいですね。
そして、これだけ身近なのに増えているのか減っているのかが分かっていないという動物でもあります。見かけたら、その記憶を覚えておいてください。
コウモリそのものについてはコウモリはなぜ暗闇で飛べる?や、今回の調査全体は日本で見られる野生動物ランキングもあわせてご覧ください。
出典:国立環境研究所 侵入生物データベース「アブラコウモリ」 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10520.html
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